2009年12月16日水曜日

石見銀山・山吹城(島根県大田市大森銀山)

石見銀山・山吹城跡(やまぶきじょうあと)

●登城日 2007年3月3日
●所在地 島根県大田市大森銀山
●指定 世界遺産登録・国史跡指定
●標高 414m
●築城期 延慶年間(1308~11)
●築城主 大内弘幸
●遺構 郭、帯郭、土塁、石垣、堀切、虎口、櫓台、礎石建物、吹床跡その他

◆解説(参考文献「島根県の歴史散歩」、サイト「山陰の城館跡」・「島根県遺跡データベース」その他)
●登城したのは、2007年3月で、午前中に仁多(雲南市)の三沢城を登城し、そのあと車を西に走らせ、石見銀山に入った。このころは山城探訪も初期のころで、登城の経験も浅く、登城する際の要領や、体力的なエネルギー配分など身についていないころである。

【写真左】山吹城主郭付近から北東方面の眺望
 前記したように、山城の遺構を確認する知識が希薄で、しかも、ヘトヘトになって登り切った安ど感と、眺望のみに興味が移り、写真も登山者のそれと同じスタンスで撮ったものばかりである。

【写真左】山吹城遠望
 南側に聳える矢滝城側から見たもの(2013年4月5日)。









●石見銀山が世界遺産登録されたのは、2007年の7月である。従って、登城したのは登録される4カ月前で、現在のように車で来た場合のような交通規制はなく、大森の町並みの奥の駐車場に置くことができた。

●現在もあるのかわからないが、ちょうど駐車した傍らに作業詰所のようなものがあり、そこで遺産登録に向けて準備作業をしていた人たちがいた。

●当日銀山に来ていた観光客はもっぱら「間歩」や町並み探訪が主で、山吹城へ登城するような観光客は私ら夫婦のみだった(今でもそうかもしれない)。詰所にいた担当の人に、山吹城登城のルートなどを尋ねたところ、親切に教えていただいたが、登城途中に、数日前に降った大雨で山道が壊れているところがあるとのこと。また、高所になるほど傾斜がきついので、足もとも十分に気をつけるようにと、再度念を押されたのを覚えている。
【写真左】主郭付近東側斜面
 山吹城は南北に長く、東西は天然の険峻な切崖である。







●登城口を過ぎたあたりから、予想通り谷間からあふれ出た水が道を横断して溝をつくり、倒木も斜面になぎ倒されたままという状況だったが、登城ルートそのものに障害物はなく向かった。

●中間地点あたりから傾斜が際立って厳しくなり、途中で何度も引き返そうかと思ったが、下るにも結構体力を使いそうだったので、逡巡しながら一歩一歩足を前に出して進んだ。これだけきついと、下から攻め入って行ったとしても、それまでに体力を使い果たして、攻撃する体力や気力もなくなるだろうと思われる。まさに、掛値なしの「難攻不落の山城」であることを身をもって知ることになった。

●そうやって悪戦苦闘の末、たどり着いた本丸からの眺めを目にしたとたん、いっぺんにそれまでの疲れが吹き飛んだ。とにかく絶景である。ほぼ360度のパノラマである。これまで登城した山城の中でも、眺望の素晴らしさは最上クラスと思える。
【写真左】主郭付近から北側郭および北東部を見る
 眺望としては全体に北側がよく、北東山麓に大森銀山の町並みがほぼ見渡せる。




●冒頭にあるように、山吹城の築城期は島根県遺跡データベースでは延慶年間(1308~11)としているが、これはこの時期、大内弘幸が銀山・峯山において白銀を採り、外国船に与えるという記録(「銀山記」)を根拠とするもので、史料によっては、天文2年(1533)の大内義隆が石見銀山を奪回した時とするものもある。

●延慶年間を含め鎌倉末期でも出雲・隠岐国において、各郷に地頭職が安堵され、それぞれの本拠とする居城がつくられている。このことから、大森においても、大内氏が拠った城は当然造られていったものと思われるので、築城期は延慶年間とする方が現実的である。
【写真左】主郭付近
 各郭の施工精度がよく、削平地である郭の輪郭が把握しやすい。








●その後の山吹城の変遷は他のサイト・資料で度々紹介されているので、詳細は省くが、大まかにいえば、戦国期に至って、大内氏・尼子氏・小笠原氏・毛利氏らが銀山・山吹城をめぐって30年以上も攻防を繰り返し、最後は毛利元就が治めたということになる。

●当城の概要は、ほぼ独立峯の山で、山頂部に主郭を置き、南北に数段の郭を配置している。南側の山腹の斜面には放射状の連続した16本の畝状空堀(竪堀)があり、そのほか主郭南側にクランク状の折れた大規模な空堀があるという特徴を持っている。

●城下からみると、山城としての要塞施設を優先するよりも、示威的、あるいは威圧感を持たせた山城であり、近世城郭の片りんをうかがわせるものだといわれている。

【写真左】大森銀山の町並みおよび、出雲大社方面を見る











【写真左】日本海と日御碕方面を見る












【写真左】東方に「三瓶山(さんべさん)」を見る。











◎関連投稿
矢滝城(島根県大田市温泉津町湯里 西田)

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